1.公差計算

複数の部品の合計が機能をするとき、合計のばらつきを計算することがあります。
例えばAssyがA,B,Cの3点の部品からなり、それぞれの公差が±a,±b,±cであった場合の全長の平均Lと公差±𝑙を求める場合

【単純累積】
単純累積では 全長L±𝑙=(A+B+C)±(a+b+c) となります。部品点数が少ない場合はこれでもいいですが、部品点数が多くなってくると、全長の公差は大きくなり、機能を満たすためには逆に各部品の寸法公差を厳しくしなければならなくなります。単純累積で計算した公差をはみ出る不良はゼロですが、過剰品質となりコストアップになります。そこで分布の考えをします。

【二乗公差】
各部品が例えば切削で作られるのであれば、狙い値に対し正規分布するばらつきをもっていることが一般的です。
部品A、B、Cの正規分布の平均値を 𝑋𝐴  ̅、𝑋𝐵  ̅、𝑋𝐶  ̅ 、分散をV(X)、V(Y)、V(Z)とすると ASSYの平均値 X ̅、分散V は以下となる。分散は加法性がある。
  平均値 X ̅=(𝑋𝐴  ̅+𝑋𝐵  ̅+𝑋𝐶  ̅)/3
  分散 V= V(X)+V(Y)+V(Z)
ASSYおよび部品A、B、Cの各標準偏差を𝜎、𝜎𝐴 、𝜎𝐵 、𝜎𝐶 、とすると分散=標準偏差の2乗であるので
   標準偏差 𝜎2=𝜎𝐴2+𝜎𝐵2+𝜎𝐶2

ASSYおよび部品A、B、Cの上下限公差を3σ(±3σならば片側棄却率0.15%、または4σの場合でも同様だが)と、とらえれば
  標準偏差 (3𝜎)2=(3𝜎𝐴)2+(3𝜎𝐵)2+(3𝜎𝐶)2
とかけるので、各公差の二乗も加法性があり
     𝑙2=𝑎2+𝑏2+𝑐2
と考えることができます。つまり各部品の公差を守る確率はASSY後も同じ確率で公差を守ることができます。したがってASSYの公差は
    𝑙=√(𝑎2+𝑏2+𝑐2 )
と計算できます。

【矩形分布公差】
しかし各部品の工程能力がなく、検査によって合格品のみ納入されるような場合は正規分布ではなくなります。各公差域での分布確率は一様であると考え、合計を計算することになります。矩形公差同士の合計は正規分布にはなりませんがN数が増えれば正規分布に近づいていきます。

関連寸法N個の各寸法公差が±ai(i=1,2,・・・,N)の場合、これらの部品の組付けによる累積公差Tは以下で与えられます。N数が増えるとt:修正係数は小さくなります。





【例題】以下の部品を組付けたとき、すき間は確保できるか検討せよ

①単純累積の場合
すき間δ=76-(20+40+15)=1
公差 T=0.3+0.4+0.2+0.2=1.1
すき間=1±1.1⇒最小は1-1.1<0 ・・・干渉する×

②2乗公差の場合
すき間δ=1
公差 T=√(0.32+0.42+0.22+0.22)=0.574
すき間=1±0.574⇒最小値=1-0.574>0 ・・・干渉しない〇

③矩形公差の場合
すき間δ=1
・H=√((0.32+0.42+0.22+0.22)/4)=0.2872
・修正係数t=0.7759
・N=4
⇒公差 T=tNH=0.8914
すき間=1±0.8914⇒最小値=1-0.8914>0 ・・・干渉しない〇

【最後に・・使用上の注意】
単純単純累積で計算した公差域を超えるのは0%ですが、2乗公差、矩形公差は棄却率分の確率でNGが発生することになります。NGが発生した場合の影響についてFMEAなどでリスクを検討し、厳しさに応じた処置を決める必要があります。軽微な影響であれば放置でもよいが、重大事故につながる場合は出荷検査などでNG流出防止する対処をする必要があります。初期流動で計算結果の確からしさを確認しておくこと(工程能力指数:Cpkの確認)も大切です。
また矩形公差を使用する場合、各部品の寸法公差のレベルが大きく異なると、矩形分布で求めた公差範囲が単純累積より大きくなることがあります。この場合は単純累積法を使用してください。