磁気センサについて ⑴長短所

磁気センサは現業での長い開発経験があって、最近では技術セミナー、雑誌記事などがあり、私の専門とするところですが、しばらく「磁気センサ」について思うところを述べてみたいと思います。技術的なまとめは「磁気センシング技術と設計」のところに書いていきますが、ここではあまり体系にこだわらず、経験を含めて述べていきたいと思います。

【磁気センサの長短所】
長所は、やはり①汚れに強いこと ②非接触であること ③理論が確立していること でしょう。
①はヘビーデューティーな使われ方ができますので自動車用でもよく使われます。ここは光学系では難しいところです。
②は摩耗がないことで、高寿命が可能です。ただし磁石からの距離にしたがい磁界が急減しますので、配置設計に注意しなくてはいけません。
③は設計計算ができ、磁場シミュレーションを活用しながら磁石やコア、検出素子の配置やサイズを決めていくことができます。同時に計測機器も充実していますので、実験解析も容易です。

代わって短所は⑴鉄粉鉄片を吸寄せること ⑵外乱の磁界の影響を受けること ⑶温度劣化があること でしょうか。
⑴は致命的です。カバーをつけるなり、絶対に磁性体異物(鉄片)から隔離してください。鉄が付着すると磁場が大きく乱れ、センシングは不可能になります。対応はまず無理です。鉄粉程度なら求める精度により許容できる場合もありますが・・・
⑵も磁気シールド板などで防ぎたいところですが、磁気回路の工夫や磁気検出素子によっては差動方式で外部のマクロな磁界をキャンセルすることもできることがあります。
⑶は程度問題です。磁石は温特のいいものを使う:アルニコやサマコバですね0.02~0.03%/℃。ネオジやフェライトもそれよりは落ちますが0.1%/℃くらいですから、高精度でなければ使用可能です。それよりも気を付けるべきは不可逆減磁です。不可逆減磁の発生する要因は主として2つあって、外部磁界か温度です。磁石のBHカーブをよく読んでPc(パーミアンス係数)との交線で判断します。紙面の関係上ここでは説明不可能ですが、ここが磁気回路設計上のキモになるところです。不可逆減磁したものは性能低下し、市場クレームとなって返却されます。アルニコは温特はよいのですが保磁力が弱いので不可逆減磁に注意が必要です。