搭載場所、環境
自動車用センサの搭載場所は稼動する対象の近く、つまり、エンジンやブレーキ、トランスミッションなどに直接置かれるため、温度、振動、飛水、などの過酷な環境下にさらされることとなります。
例えば車輪速センサであればブレーキパッドが近く、ー40~120℃、振動22G、水没あり、といった具合です。
このような環境下で 車両制御するような重要部品は車の一生の間故障せず、作動しなければいけません。自動車用センサは私たちが日常使用する家電や文具とはケタ違いの信頼性を持たなければいけません。

信頼性試験
先述しましたように、過酷な環境で長期信頼性を達成するために、カーメーカからは様々な要求が出されます。一例をあげますと
①高温放置・低温放置試験(120℃×96h、-40×96h)
②熱衝撃試験(-40×0.5h⇔120℃×0.5h、を1000サイクル)
③浸水試験(80℃高温⇔常温水没、を100サイクル)
④振動試験(22G×4h×XYZの3方向)
⑤耐候性試験(サンシャインアーク灯)
⑥耐油耐薬品(オイル、ガソリン、フルードをかけて80℃放置)
・・・・・
などなど、20項目程度が要求されます。カーメーカ各社により、温度や時間は変わることがありますが、いずれにせよ水、熱、振動、油は故障の原因となりやすいもので、これらに対応した設計を当初からやっておく必要があります。
信頼性試験は数か月に及ぶ長期試験となるため、故障が発生したら、要因を突き止め⇒対策を打ち⇒設計盛り込み⇒試作⇒再評価となりますので、時間ロスが相当発生します。

設計品質への盛り込み
このような試験評価時の故障など開発のやり直しを防ぐためには、過去のノウハウやトラブル事例の情報を把握し、あらかじめ使用条件を考慮して、それに対応した設計構想を行う必要があります。経験豊富な先輩が部下へ指導育成し、部下が成長し実践できていくこと、実施結果(設計内容)をきちんとチェックし是正することが必要です。開発組織において、このような組織的な教育育成やチェックが十分でない体質であると、市場に出てからも不具合を出してしまいます。不具合は会社に経済的損失と社会的信用喪失をもたらし、ダメージを与えます。
特に開発新製品の場合、過去に他製品でノウハウをもつベテラン設計者が指導するのですが、それでも開発段階では意図しない不具合が出てしまいます。それを防ぐためにFMEAなどのリスクアセスメントや種々の品質手法を使い設計を進化させていきますが、それでも想定外がありますので、先に述べたような対策設計を行う、やり直しはある程度見込まなければなりません。
品質管理手法を駆使しても新製品では対策設計をしなければいけない。ということを申しましたが、逆ないい方をすると、「設計の品質管理手法を知らないと新製品開発はできない」と言えます。もちろん故障したら交換すればいいような、アクセサリー的なものは安く、品質そこそこでいいのですが。ここでいう自動車用センサとは車両運動制御する機能部品のことを言っています。

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