(1)磁石と磁性体

磁性体という言葉を聞いたことがある と思います。磁性体とは外部磁界に置かれたときに材料内部が磁化されるものを言います。磁化とは簡単には自分自身が磁石になった状態と考えてもらえばよいです。
磁性体には①強磁性 ②常磁性 ③反磁性 の3種があります。

①強磁性体とは、外部磁界をかけた時に強く磁化されるものを言います。そして外部磁界を取り去っても磁化が残るものです。具体的には磁石や鉄、ニッケルなどです。外部磁界を取り除いたときに大きな磁化が残るものが磁石で、硬磁性といいます。外部磁界を取り除いたときに少しの磁化が残るものを軟磁性といい、鉄やニッケル、コバルトなどが該当します。

②常磁性体は外部磁界をかけた時に弱く磁化されるものを言います。そして外部磁界を取り去ると磁化はなくなります。アルミや空気がこれですが、一般的には磁性がないなどと言ったりします。

③反磁性体は外部磁界をかけた時に反対向きに弱く磁化されるものを言います。そして外部磁界を取り去ると磁化はなくなります。水や銅、亜鉛などがこれにあたります。

磁気センサを構成するときには、一般的には磁気の発生源として磁石か電流を使います。そしてその伝達経路として軟磁性体を使い磁束を流し、磁気検出素子に伝えるということになります。これは電気の発生源である電池が電圧を発生させ、伝達経路である銅線や電気抵抗が電子(電流)を流し、素子やICに伝えることと同じことです。
磁石から出た磁束を検出素子まで伝える経路を磁気回路と呼びますが、磁力発生源である磁束量や磁束密度は大きいほうがよく、伝達媒体である軟磁性体は磁気抵抗が小さいものが効率よく磁束を伝えることができ、SN比の良いものができます。スペックで言いかえますと、磁石はエネルギー積が大きい、残留磁束密度が大きいのが良いですし、軟磁性体は透磁率μが大きい、ヒステリシスが小さいということになります。そしてこれをどのように設計すればいいのか、これは材料の磁気特性を読み解き、形状とともに設計することが要となります。