各センサを構成する上で 共通となる設計留意点を述べておく。
1. 磁石の選定
理想的な磁石は
・残留磁束密度Brが大きい
・保持力Hcが大きい
・温度特性が小さく、耐熱性がよい
であるがすべてを満たすのはコストやサイズに負担がかかる。使用用途、環境、温度、要求精度、コストなどを考慮した上で必要十分な特性の磁石を選定するのがよい。

以下に代表的な磁石材質と特徴を記しておく。

①ネオジム磁石(NeFeB)
・磁粉をプレスした後、焼結し製造する。
・磁石の中でもっとも強力(磁力、保磁力が最大)。
・錆やすいのでNiメッキで防食している。
・Brの温度特性は0.1%/℃程度。
・割れ欠けしにく機械強度は強い

②サマコバ磁石(SmCo)
・ネオジムに次ぎ磁力は強力。焼結で製造。
・錆びには強くメッキは不要。
・Brの温度特性は0.03%/℃程度と良い。
・硬くもろく割れ欠けしやすい。

③アルニコ磁石
・鋳造で製造する。磁力はネオジの1/5ほど。
・Brの温度特性は0.02%/℃程度とよいので計測機に適する。
・外部磁界や温度で減磁しやすいのでサイズが大きくなる。
・材料自体も比較的高価である。

④フェライト磁石
・磁粉をプレス後焼結する。おもちゃ用、ホワイトボード掲示用。
・最も安い。磁力は弱い。
・低温で保磁力が下がり減磁しやすくなるので注意が必要。
・硬くもろく割れやすい。

⑤ボンド磁石
・各磁石の磁粉とバインダ樹脂を混ぜて射出成形または圧縮成形したものがプラマグであり、ゴム成形したものがゴム磁石である。
・射出成形では形状が自由にできる。
・ボンド磁石は元の磁粉より磁力は弱い。

2.磁気回路を構成する磁性体
 磁石の発生する磁力をロスなく伝える材料が理想である。言換えると、透磁率が大きく、ヒステリシスが小さいものがよい(前頁図19)。磁力が大きい場合は飽和磁束の高いものがよい。使用用途や要求性能を考慮し選定するが、必ずしも高級高価な材質である必要はなく、低炭素鋼のS10Cなどでも可能な場合はある。高周波で使用する場合は渦電流損を防止しなくてはならず積層電磁鋼板やフェライトを使用するのが一般的である。

3.周辺磁性体の影響検討
 磁石から発生する磁気は磁気回路をなす磁性体を通り検出素子へ磁気信号を送るが、周辺の磁性体の影響にも注意が必要である。ドアや治具類が検出部に近く配置されておる場合、磁気回路に干渉を及ぼしている可能性がある。センサの元の性能が機器搭載時に保たれているか、基本性能の確認をしておくことである。

4.外乱磁場の影響
 意図せず外部から磁場がかかり性能を害することがある。電気ヒータ、送電線、モータからの磁界、近接した磁石などに注意したい。周辺磁性体同様に磁気回路を干渉し性能を妨げることがある。機械自体や治具が鉄系の場合、磁化されている場合もある。ガウスメータなどで点検を行い、元のセンサ機能が保持されているか確認をしておきたい。

5.磁気センサ使用上の留意点総括
 磁気センサ応用時には要求する精度や使用環境を考慮することが共通事項である。スイッチ、ストロークなど磁気発生源が安定なものであればどの方式でもよく、安価なホールICが使われる。ところが磁気センサが高性能になるほど以下の要件を気にしなければならなくなる。
 ①磁石の温度特性
 ②距離の2乗で変化する磁場強度
 ③外乱磁場の影響 
 ④磁気回路をなす磁性体自身がもつヒステリシスや磁気飽和
 ⑤磁気検出素子も温度や電磁波の影響を受ける
回転センサ専用ICや角度センサ専用IC(どちらもホール、AMR、GMRあり)には上記外乱に対応した信号処理やアルゴリズムが搭載されてものもあるので、専門メーカによく聞きこんだ上で対応することがよい。