これまで説明した各種磁気検出素子を使い、センサとして使うための構成例、留意点を述べる。機器構成時の参考としていただきたい。


①磁気スイッチ
単なるスイッチであればバイポーラ、ユニポーラとも安価なホールICがそろっているのでそこから選択するとよい。代表的な磁石-検出素子の組合せ、および一般的な回路(IC内で構成)を示しておく。磁石の発生する磁界は距離の2乗に反比例し減衰するので、磁石と検出素子の位置はガタつきなく、それぞれをしっかり固定することが大切である。

図15 磁気スイッチの構成例

②回転センサ
対象を多極着磁ロータまたはバックバイアス磁石+ギヤロータとすると①同様の回路でホールICはHigh/Lowパルス波を出力する。ただし、エアギャップの変動があったり外乱磁界がかかると、磁気信号が乱れ誤作動することがあるので注意が必要である。この場合、差動素子構成や信号処理回路で外乱をキャンセル可能なホールICが各ICメーカからリリースされており、対応は可能である。磁気抵抗素子;AMRやGMRでも構成は可能であるが面内磁界を回転させる必要があるので、磁気回路の工夫が必要であり、サイズも大型化しがちである。

図16 回転センサの構成例

③角度センサ
磁石と検出素子の関係は図17に示す。2極円盤磁石の軸端を回転させると水平方向の磁界がSin関数で変化する。素子はホール、AMR、GMR、TMRのいずれも適用可能である。素子を2対とし、機械角で互いに90度ずらし(AMRは45度)位置させており、それぞれが磁界ベクトルを検出する。2対の素子は磁気位相角として90度ずらしているので、一方がSin波形ならもう一方はCos波形を作り出す。これらからθ=tan-1(sinθ/cosθ) をIC部で演算し角度が求まる。
ここでホール素子は素子に面直な磁界成分しか感知しないはずだが、ICパッケージ内部に集磁板を内蔵させ、磁界を水平から垂直成分に曲げて検知可能としている。MR系は面内磁気ベクトルをそのまま検出するので集磁板は必要ない。
 角度センサは磁気ベクトルを検知する原理であるので、留意点は
・磁石の着磁精度を確保すること。
・回転軸がぶれないこと。
・外乱磁界に注意すること。
となる。一般的に、なるべく大きな、磁力の強い磁石を使うことが誤差には有利となる。ただし仕様上の最大磁力以上の磁力を与えると特性が飽和したり、内部磁化構造が壊れるので注意が必要である。
 磁石の精度や位置ずれは波形の歪みを起こし、角度演算上の誤差となるが、いずれの素子ICにも直線補正アルゴリズムを装備するICがあるので精度を高めたい場合は検討しておきたい。

図17 角度センサの構成例

④電流センサ
電流が流れるとアンペールの法則により、その円環周囲状に磁界を発生させる。その磁界強度をリニアに増幅するのが作動原理である。ホール素子はこの点でよく使われるが磁気抵抗素子は抵抗変化が磁気強度にリニアでないので、フィードバック方式を使う以外では、通常不適である。ホールICは電流銅線の近くに磁界が直交する角度位置で配置すればよいが、外乱磁界の影響が懸念される場合や高感度化が必要な場合は集磁コアを設定する。自動車HEVモータ制御等では集磁コアで外乱に対応している。

図18 電流センサの構成例