ここからは各磁気検出素子の原理と特徴等について解説する。各素子の長短所を把握し効果的な活用をすることが大切である。
⑴リードスイッチ
【原理】ニッケルなどの磁性体接点片を窒素などの不活性ガスを入れたガラス管内で封止したもの。通常はオープンの状態⇒両端の磁性体に磁界を受けると、磁性体が磁化し、接点部分が引き寄せられ電気的に導通する。
図6 リードSW作動原理
【用途】位置検出、液面検出、家電のスイッチ用カバーなど
【特徴】
・長所:簡単な構造で安価で使いやすい。
・短所:接点があるため、寿命がある。信頼性は高いが使い方によっては固着や導通不良の可能性がある。
⑵電磁ピックアップ
【原理】図7のように磁石、ヨークコア、コイルから構成される。コイル内を通る磁気の時間変化を誘導起電力として取り出す。
図7 電磁ピックアップ作動原理
【用途】回転センサ、振動計、エレキギター
【特徴】
・長所;構造が簡単。電源不要。堅牢。
・短所;静磁場や変化の遅い磁場は検出できない。ギャップ変動に敏感。外部から変動磁界で出力してしまう。
⑶ホール素子/ホールIC
【原理】入力制御電流Icを流し、外部から磁束密度Bの磁界を受感部面に垂直に作用させると、出力端子間に電位差VH(ホール電圧)が発生する。
ホール電圧は素子に面直な磁束密度Bに比例する。
図8 ホール素子作動原理
ホール式にはホール素子単品で動作するものと、信号処理回路一体でIC化されたホールICがある。ホール素子はGaAs、InAsなど感度の良い材料を素子としパッケージ化しているが、ホールICの場合は材料をSiとし半導体工程でワンチップ化している。
【用途】磁気SW、スマホコンパス、回転センサ、角度センサ、変位センサ、電流センサ
【特徴】
・長所;磁束密度とともに直線性のよいホール電圧を出力するため、磁気スイッチや磁場強度検出などの計測用にも適する。ICと一体化することで、信号処理、補正ができ外乱磁界や電気雑音に対する対処が可能。
・短所;ホール電圧はDC的にオフセットする特性があり、温度や応力に対し変動する。適切なICを選ぶことで補正は可能である。
⑷強磁性磁気抵抗素子/IC(AMR;Anisotropic Magneto Resistance)
【原理】FeNiなどの磁性体薄膜に電流を流しておき、面内方向磁界を印加すると、抵抗値が低下する。最も抵抗値が変化するのはθ=90°である。磁界と抵抗の関係は左下図のように磁界に対し左右対称であり、特徴として“磁界の正負の判定はできない。”ことがあげられる。ホールIC同様に素子+信号処理回路を一体化できるが、素子は金属蒸着であり、ICはシリコン半導体工程なのでワンチップにはできない。このため設計的コストはホールICより高くなる。
【用途】磁気SW、回転センサ、角度センサ
【特徴】
・長所;ホール式に比べ信号変化が大きくできるので、S/N比がよい。磁気角度で変化するため角度センサに適している。
・短所;磁束密度に対して直線性はないので、磁気強度検出は不可。短所とはいえないが、角度センサに使用した場合は機械角1回転で2周期の電気変化をするので注意が必要。