-1.センサとは
センサは、自然現象や人工物で生じた現象を検知し物理原理や化学原理に基づいて電気信号に変換し出力するものである。センシングする物理、化学現象は量として様々であるが、微小量を扱う高感度センサの場合は入力した微小信号を大きく増幅する必要がある。ところが求める信号以外に望ましくない外乱ノイズ〔=電気ノイズや機械ノイズ、磁気や電波などの外乱〕も入ってくる。

これらのノイズも同時に増幅すると、当然信号のS/N比を落とし、誤作動につながる恐れとなる。高感度なセンサ開発というのは言い換えると「外乱ノイズをいかにふるい落とし、目的信号を取り出すこと」といってよい。それがセンサ製品の優位性となっている。
   【図2 センサの信号経路】

-2.センサの分類と種類

 センサを人間の五感に例をとり、代表的な検出対象がどういった物理原理、化学原理を使って検出されるのか表1に整理した。
検出対象として
 ①光(光の強度、色=波長) ②音、振動 ③力、圧力 および
 ④温度 ⑤ガス ⑥イオン ⑦加速度、ヨーレート

以上は人間が有するものであり、感覚器官として五つ、物性としては七つを数えた。

人間の五感以外の要素としては
 ⑧幾何学的位置、角度 ⑨速度 ⑩距離
などがある。

【表1.人の五感を例とした検出対象と検出原理】
感覚器 検出対象 検出原理 検出デバイス
視覚(目) 光(強度、波長) 光電効果 フォトダイオード、イメージセンサ、カメラ
聴覚(耳) 音、振動 電磁誘導
圧電効果
静電容量
マイクロフォン
PZT
Memsセンサ
触覚(皮膚) 力、圧力 電気抵抗
圧電
静電容量
磁歪
ひずみゲージ、圧膜抵抗体
PZT、半導体薄膜
Memsセンサ
磁歪センサ
温度(皮膚) 温度 熱膨張
ゼーベック効果
電気抵抗特性
温度計
熱電対
感温抵抗体、サーミスタ
嗅覚(鼻) 味物質、イオン 電気化学反応 人口脂質膜
平衡感覚
(三半規管)
加速度、ヨーレート 圧電効果
静電容量
Memsセンサ
変位系 位置、角度
速度
ホール効果
磁気抵抗効果
電磁誘導
ホール素子/IC
AMR、GMR、TMR、
電磁ピックアップ、レゾルバ
距離 音速、電波 ソナー、レーダー

 センサの原理は特に工業用センサでは物理法則を利用していることが多い。これはセンシングメカニズムが物理原理によって解明されているものが多く、特徴を把握して利用することにより、信頼性、再現性を高いものとすることができる。一方、化学法則を利用する、臭いや味、ガスや湿度などのセンサは分子成分を金属酸化膜や人工脂膜などに吸着させ酸化還元等の電気化学反応により電気信号を生み出すものである。センシング感度面状態に依存するため、環境変化や時間経過に左右されやすいという弱点がある。
 人間の五感は光や音振動、圧力、味、臭いを感覚器で検知しており、生物化学的反応から電気信号を発生させ神経細胞へと伝達している。その詳細メカニズムは未だ不明な部分が多いようだが、最新の生体計測技術の進歩で進みつつあるとのことである。古くから科学技術は、人や自然生物の生体活動をヒントにして新しい原理や機構を生みだしてきていることが多い。この複雑かつ合理的なメカニズムを解明することにより新たなセンサ開発につながることを期待したい。

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